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外国人短期滞在者の保釈について(1)

短期滞在者の特徴として,日本に住所がない点が挙げられます。そのために,裁判官が保釈を認めることはあまりありません。しかし,以下の点に気を付けて保釈請求をすれば,認められることもあります。

 

1 判決までの住所を確保すること

裁判官は,召喚状等が確実に送達される住居でない限り,住所とは認めません。ホテルには送達されないので,ホテルを住所とすることはできません。都内には週,月単位で賃貸可能な物件がありますので,そのような物件を契約して居住できるようにし,契約書及び賃貸人に関する情報(会社であれば登記やHP)を保釈請求の資料に添付します。また,住所に関する上申書を作成し,保釈請求時に当該物件を制限住居と定めるよう申し入れます。事前に賃貸人から鍵を預かり,裁判官との面接時に鍵を持参して裁判官に対して鍵を見せます。

 

2 住所宛に確実に送達される手続きをすること

郵便局には,備え付けの「転居届」があり,転居届をポストに投函すれば,郵便局は転居先の住所に郵便物を届けてくれます。そこで,転居届に,必要事項を漏れなく記載します。また,住所を管轄する郵便局に電話し,短期滞在先に郵便を送付して欲しいのだが,上記のように転居届を投函すれば郵便物を送付してもらえるかを確認します。転居届は投函前に写しを取り,郵便局への電話聴取内容を踏まえて,住所宛に確実に送達される旨記載した送達に関する報告書を作成し,保釈請求書と同時に提出します。

 

3 パスポートの管理

外国人は日本滞在中,常にパスポート又は在留カードを持ち歩かなければなりませんが(出入国管理法23条),短期滞在者は通常パスポートしか所有していません。保釈後本人にパスポートを所持させると逃亡の危険があることから,裁判官は弁護人がパスポートを預かることを求めますが,弁護人がパスポートを預かってしまうと,短期滞在者は出入国管理法23条に違反することになります。そこで,持ち運べる大きさのセキュリティーボックスを入手します。セキュリティーボックスの中にパスポートを保管して鍵をし,鍵は弁護人が保管し,鍵をかけられた状態のパスポートを本人に渡すのです。そのようにパスポートを管理する旨の報告書を作成し,保釈請求書と同時に提出します。裁判官との面接時に,実際にパスポートが中に入った状態のセキュリティーボックスを持参します。

 

(2)に続く

 

弁護士 川原 朋子

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